おりょ工房

デジタル&リアルアート、音楽、絵画、小説、マラソン、トレラン等のブログです。

持続可能な社会におけるお金の使い方


もう20年以上前のことだ。
当時学生だった私はある種の若者にありがちな世界のいろいろなところを見てやろう、という野望のもと長期休暇のたびに滞在型の貧乏旅行に行っていた。
サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストン、台北、上海、ロンドン、どこも2週間から一ヶ月、サマースクールや友人宅に泊めてもらって観光地にはほとんど行かず、現地の生活を楽しんだ。ニューヨークではソーホーに通い詰め、自由の女神は結局見なかったし、ロンドンでも蚤の市が楽しく、ビックベンは記憶がない。
服も現地の古着屋で購入し、観光客から道を聞かれる程度に地元に溶け込んだ。そこで感じたことはその後の自分の形成に何かしらの影響を与えている。

今回はその中でも人生形成に大きな影響を持ったロンドンで感じた感覚を思い出しながら文章化してみたい。

1990年台後半、ロンドンも日本も経済状態が良くなく、金融破綻とか経済がマイナス成長、とかそんな状況だった。

ヒースロー空港に降り立ってからイギリス滞在中はほとんどずっとどんよりした曇り空。
物価は高く、食パンが400円、タバコが500円、リーバイスが1万円。食べ物も服も日本に比べてとても高かった。買うものがない、買いたいものがない、が第一印象。現地に溶け込んで暮らし始めると、食材は安いものもあった。豆とか、ジャガイモとか。あまり美味しくなかったが。服は古着屋が充実。蚤の市がいたるところで開催されていて、どちらも掘り出し物を見つけるのが楽しかった。当時日本ではまだ古着屋もフリーマーケットもあるにはあったが生活に溶け込んでる状態ではなかった。

そこにあったのは新しいものが良いという価値観とは違う価値観。
ロンドンもしくはヨーロッパという長く偉大な石の文化の中で、数百年前の石畳や建物や文化に囲まれて、人々はお金を使わずとも生活を楽しむ術を心得ているという発見。

日本はもちろんニューヨークや上海でも街はどんどん新しくなりそこに活気があって人々は忙しくも刺激的な生活を送っている。

ロンドンでは特に新しいことに価値を持っていないようで、その中でゆっくりと人間的な生活を楽しむ、という感じだった。(とは言ってもアバンギャルドなアートは当然あってその振れ幅もすごかった)

忙しく働いてお金を稼いで使って新しいものから刺激を楽しむ生活、その一方で(仕事もないので)あまり働かず、(お金もないので)お金をあまり使わずに生活を楽しむ楽しみ方を知っていて、楽しく過ごす生活。
こんな生活の仕方があるんだな、当時の自分は何気なくカルチャーショックを受けた。当時受けたこの感覚は自分の中で成長し生き続けている。

モノからコトへ、とか消費型社会から持続可能社会へ、などへの私の共感を裏付ける一つの体験だ。
お金は上手に使えば人生を豊かにする。しかしこれはいうほど簡単なことじゃない。
お金を使わずに楽しむ生活ができる人こそが、お金を上手に使って人生を豊かにできる人だ、と私は密かに思っている。



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