おりょ工房

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Perfect days/完全なる日々

友人の勧めと気になっていたのもあり、久しぶりに映画を1人で見に行く。

Perfect days/完全なる日々

主人公の平山はトイレの清掃員。
朝近所のおばさんの箒の掃く音で目覚める。布団をたたむ。歯を磨く。ヒゲを剃る。着替える。育てている木々に水をやる。仕事に必要な鍵を一つづつ確認する。缶コーヒーを買う。車で仕事に向かう。車の中ではカセットで音楽を聴く。仕事は非常に丁寧に行う。お昼ご飯は木漏れ日の綺麗な神社の境内でコンビニのサンドイッチを食べる。仕事が終われば自転車で銭湯に行きなじみの居酒屋に行く。夜は本を読んで寝る。木漏れ日の夢をみる。
これが平山の1日だ。そしてこれらが完全に正確に繰り返される。
小さな幸せや小さな不幸せがあるがそれも含めて完全にルーティーン。
平凡な日々を噛み締める平山。なるほどこれが完全なる日々か、こういう人生も確かに悪くないんだろうなと思わせたあたりから物語は変化していく。

(ここからネタバレあり)

休日のルーティーンである居酒屋のママが人生を歌い、お客が小さくは無い不幸せな話をする。
同僚が彼女と揉める、突然仕事を辞める。

平山の姪が突然現れる。家出してきた姪との不思議な同居が始まる。
姪は平山に癒される。しかし、姪の親、平山の妹が子供を迎えに来る。そこでほのめかされる平山の過去。明確にはされないが平山家の不幸な過去があったことがほのめかされる。

妹が運転手付きの高級車であらわれる平山家は、相当なお金持ち。平山と父との間には過去に確執がある。父は既に老人ホームに入っていて意識も朦朧とした状態であるが、それでも平山は父を許せないでいる。トイレ清掃を仕事としている理由も、父との確執の中にある。
父の生き方を否定して家出同然で飛び出たのだろう。社会の上流で生きること。そして社会の底辺で生きる事。
平山は妹を抱きしめ、過去と現在を思い涙する。

居酒屋のママの元夫と偶然出会い人生を語る。
寡黙な平山が力説する。影と影が重なれば影が濃くなったり、薄くなったり、明るくなったり変化する。木漏れ日のように。それは平山の哲学だ。木を育てる、木漏れ日が生まれる。木は人であり子供だ。

エンディングで平山はいろんな表情をする。人生を振り返り泣く、笑う、笑いながら泣く、泣きながら笑う。平山の人生を表現する表情の移り変わり。木漏れ日のようである。

音楽と映像も素晴らしい。音楽の歌詞は少ししか聞き取れなかったが、物語とリンクしている。

完全なる日々
ヴィムヴェンダース監督、役所広司石川さゆり三浦友和